「これ以上、どうしようもないよ。」
「…。」
「この子、毛並みがきれいで、ふっくらしてるから、飼い猫かもしれない。」
確かに、この辺りにいる薄汚れた猫とは違った。
誰に聞いたのだろう。
ーー飼い主が探しに来るかもしれないから、飼い猫っぽかったら、埋めないほうがいいんだよ。
「かわいそうだけど、仕方ないよ…。」
涙が、止まらない。
「ばいばい。」
「じゃあね。」
どちらからとも無く、私たちは足を家に向けた。ただ立ち尽くしていても、何にもならない。ーー私たちはあきらめた。
カーブで見えなくなるまで、私たちは猫を振り返った。