トラックが走ってくる音がして振り向くと、やがてカーブに姿を現した。 「よけて。ちゃんとよけて」 「むこう、むこう」 私と母とで運転手に向かってジェスチャーをする。 タイヤは、しっぽのぎりぎり外側を走り抜けた。音は遠退いて、あたりは再び静寂で埋まる。 しばらく、ふたりで見つめてから、母が手袋をした手で猫を抱き上げた。 猫は、威嚇しようと、声を発した。 でも、体は動かない。