映画は古い洋画で
何かのTV番組で紹介していた。
あるおじいさんが自分の宝物を大切にして自分のためにも使わなかったのに、ある時公園で寂しそうに震えてる犬にあげてしまう。という感じの話だった。
私はなぜだか無性にその映画が
観たくなっていた。
…こんな話題性のないもの
興味なければつまらないだろう…。
ちらっと横をみると幸先輩は
無表情にストローをくわえながら
スクリーンを見つめていた。
映画館をでようとすると
幸先輩が横に並んでついてくる。
………。
『なんか用ですか?!』
私はうんざりして言った。
映画に付きまとわれてそのあとも無駄に一緒にいるなんてごめんだった。
『デートしようと思って』
『…は?!』
しばらく言い合いをしていると
先輩の瞳が何かを見つけて一瞬止まった。
……?
それはほんの一瞬だけど…
なんか……
次の瞬間に、背後から声がして
私たちは声の方に向いた。
『幸〜!!』
『げっ!美幸かよ…』
『げっ!とはなによ〜!
あんたは…はぁ…』
どうやら幸先輩の知り合いがいたらしい。
”大人の女性”という言葉が似合うような、スラッとした体型に綺麗には巻かれた栗色の髪の毛、ブランドのバッグが嫌味じゃなく似合うような女性だった。
その横にはそれに似合うような
”大人の男性”が並んでいた。
まるで恋愛ドラマの中に
でてきそうな二人だった。
幸先輩はポケットに手をいれ
少し面倒くさそうに相手をしている。
…なんか、意外。
『へ〜♪幸はデート中?』
いつの間にか話題の矛先が
私の方に向かっていた。
『それにしても…
すごい綺麗なコね〜…』
その女性に間近でまじまじと見られた。
近付いた彼女から微かに香った香水は、どこかで…記憶に新しい香りのような…
『…っわ!』
急に手をひかれて目の前が真っ暗になった。
………あ!