家に戻ると、相変わらず空っぽな部屋は 冷んやりとしていて家主の長期の不在を示していた。 両親はいつの頃からか ”仕事が忙しい”と言って あまり家に帰らなくなっていた。 お互い顔を合わせば喧嘩ばかりだから その方が煩わしくなくていいけど… 物心ついた頃から、 この冷んやりとした部屋の雰囲気が 嫌なほどに染みついてしまっていた。 ブブブ… コートのポケットに入っていた 携帯が震えた。