いつものように学校が終わって
携帯の着信に気づく。


少しだけ指先に期待のような感情がはしる。


携帯の液晶に触れると、
そこに表示された名前に
淡い熱は一気に萎んでしまった。


≫幸先輩

『学校終わった?』



小さくため息が漏れる。

成り行き上、幸先輩と付き合うことになった日から”お互いを知り合うため”ということで毎日のように会っている。


3日目でうんざりして約束を無視して帰ったら、次の日学校で待ち伏せされた。


他校の生徒が校門で待っているだけで目立つのに、幸先輩なら尚更だ。


次の日には、まるで芸能人の噂話をするかのように

”あの幸先輩”が迎えにきた人は誰か?

の話で持ちきりだった。


で、噂になるのも面倒だから
一ヶ月は大人しく幸先輩に付き合うことにした。



『お〜、ちゃんと来たね〜』



私を見つけると口角を綺麗にあげ、少しだけ意地悪そうに笑った。


『この前みたいに来られたら迷惑なんで。』


嫌味たっぷりに言ったのに
先輩はそっけない素振りで


『何かあったのかと思って、
心配して迎えに行ったのに…』



ちょっと拗ねるような素振りで
そう言うと、視線を私に戻した。


切れ長の目は涼しげに
私の目を捕らえている。


私も視線を外さなかったから
お互い見つめあう形になった。



『…そんなに見つめないでよ』



にらめっこに根負けしたかのように苦笑して幸先輩が言う。



『唯ちゃんはどんな人が好きなの?』



『幸先輩でも、そうゆうこと聞くんですね。』



『初めてかも…。

唯ちゃんは俺に興味無さそうだからね。

…で?』



『優しくないのに優しい人。』



『…なにそれ?』


幸先輩は私の言葉を口の中でもう一度呟くようにして考えている。



『本当は優しくないのに、
私にだけは優しくしてくれる人。』



”なるほど”と納得したように呟いてから



『それって嬉しいの?』



『嬉しいですよ。
誰にでも優しいよりかは、全然。』



『でもそれって相手が好きな間だけだよね?

相手が飽きたら容赦なくバッサリかもよ?

怖くない?』



『もし飽きられてバッサリでも
優しさの惰性で付き合われるよりかマシじゃないですか。』



『クールだねぇ…』



先輩は”う〜ん”と唸ったあと考えるようにそう言った。