ハンカチを探して
彼女に差し出す。


最初は不思議そうにそれをみて、
気づいたように自分の目からこぼれ落ちる涙に触れた。



彼女は『ありがとう』と小さく呟くと、ハンカチを受け取った。



警戒したように威嚇するのに
差し出す手は躊躇せず受入れる…



彼女のその不思議な感覚が
とても気になってしまったのかもしれない。



俺はこの時少しだけ、
彼女に踏み込みすぎてしまった。




『…何か辛いの?
…悲しいことでもあった…?』



子供を諭すような
そんな感覚。



彼女は目を抑えていたハンカチをゆっくりと外し、またその大きな瞳で僕を捕らえた。





時が止まる。



静寂な暗闇に
雪の舞い降り音が

静かに響いている。





彼女の表情からは
何も読み取れなかった。






数秒の沈黙は
とても長い時間にも思えた。





でもそれでも、いつまでも
彼女の答えを待てるような
そんな気がしていた。







『…どっちも違う。

……寂しかったのかもしれない』