まるで捨てられた仔犬のように
ただじっと飼い主を待ってるような、そんな感じだった。


『風邪ひくよ…』


足は無意識に彼女の元へ向かい、
手は無意識に彼女に傘を差し出していた。



彼女がその瞬間、ビクリと
肩を震わせた気がした。



でも次の瞬間には、
その大きなくりっとした眼で
明らかに訝しげに睨み付けてきた。



これじゃ…
捨てられた仔犬というより、
人に威嚇してる猫だな。



…威嚇してるわりには
頭には雪が積もっている…



『…ははっ』



なんだかその異様な状態が、
可笑しくて笑ってしまった。



彼女は更に不審そうに
こちらを見ていた。



『…ほら、積もってる。
高校生は早くお家に帰りなさい。』



彼女の頭に積もった雪を
軽く払い、傘をもたせた。



抵抗するかと思ったのに
威嚇するわりに人に触れられることには抵抗を示さないみたいだ。



変な子だなぁ。




……えっ?!




気づくと彼女はその大きな瞳から
ボロボロと滴のような涙を流し始めた。




彼女はその涙をぬぐうことなく
ただひたすらこちらを見ていた。



まるで自分が泣いてることに
気づいてないかのようだった。