最寄り駅に着いた頃には
もうすっかり真っ暗になっていた。


『唯?』


急に呼ばれて振り向くと
そこには聖がいた。


聖は同じマンションに住む
5つ年上の医大生だった。


うちの両親がほとんど家にいないのを知ってるから、小さい頃から暇をみつけてはよく遊んでくれていた。


『今帰り?』


『うん。映画観てきた』


『ご飯は?』


『食べてない。』


『じゃあ、何か作ってあげるからおいで』



昔からお兄ちゃん…というか
母親みたいに私の世話をやいてくれる。


聖といるといつも私は
子供が親に甘えるような、
そんな感覚になってしまう。


私が唯一心を許してる存在。


それが聖だった。