清春の手には、あの日記帳があった。




「……この日記、誰の?」



いつもは半分しか開かれてない、無気力な清春の瞳が、強く真っ直ぐに、あたしを見ていた。


清春は日記にはさまれていた写真を、あたしに向けて見せてくる。




「この写真の男子って、日下先生だよね。じゃあ、その隣りの女子は?」




あたしに聞いてるというより、清春自身にに問いかけているように感じた。


写真の女子と、あたしを見比べるようにして、清春は首を傾げる。




「凛じゃないよね。似てもいない。……でも」



日記を閉じて、清春は表紙をひとなでした。



「写真が気になって、ちょっと中身、見た」


「……そう」


「『あたし』と『るいち』って名前で、いっぱいだった。
写真の女子が『あたし』で、『るいち』が日下先生かなって思った」


「……うん」


「でもさ、なんか変なんだ。この日記読んでたら、『あたし』が凛に思えてきた。
『るいち』が好きでたまらないくせに、天の邪鬼なことばっかり書いてるとことか。

素直じゃない凛と、よく似てるだろ?」