現実から逃げるように、ベッドの中にもぐりこんで丸くなる。



ああ、しまった。

バッグと日記、持ってきてないじゃん。


日下先生が持ってたんだっけ?

でもまた地面に落ちてたような気がする。


きっと先生に、持っていかれちゃう。



さらに体を丸めると、部屋にノックの音が響いた。




「凛? 具合が悪いって、大丈夫なの?」


「……ごめん、お母さん。パーティー、明日じゃダメかな」


「それはいいけど。お腹が痛いの? 薬は?」


「大丈夫。ちょっと、寝るね」


「わかったわ。起きたら消化に良いもの作ってあげる。おやすみ、凛」




いつもの倍以上優しい声でそう言って、お母さんは部屋の前からいなくなった。


今日誕生日だし、めずらしく具合悪いなんて言うし、心配してくれてるんだ。

せっかくお祝いの用意してくれてるのにね。


でもいまは、ケーキを食べても、美味しいって思える気がしない。


プレゼントもらっても、笑って喜べる気がしないんだ。



ごめんね。