「凛!!」




つめ寄る先生と、黙りこむあたしの間を、裂くような声が響いた。


家の方向から、走ってくる影。

それを目にした瞬間、心底ほっとした。



助けて、清春。

もうどうしたらいいのか、わかんないよ。




「凛を放せ!!」




清春が日下先生の体を突き飛ばして、あたしを背中に隠すように立った。


いつの間にかこんなにも大きくなった、清春の背中。

すがりつくように、その背に顔を埋める。




「矢代か……」


「日下先生、凛に何してたんです!」


「おまえには関係ない。俺はどうしても、小鳥遊に聞かなきゃならないことがある」


「ただのいち生徒に、何を聞くって言うんですか。しかも休日に、その生徒の自宅近くで」


「そういう言い方をされても、俺は引く気はないぞ。やましいことは何もない。……小鳥遊」




低い声に呼ばれて、体がすくむ。

返事もできなくて、清春の背にしがみついた。




「頼む。話してくれ」


「……それはどうしてもいまじゃないと、いけないんですか?」




あたしをかばうように、清春が言った。


本当に、あたしって清春に頼ってばかりだ。

肝心なことは言わないで、こういう時だけ助けてもらうなんて、なんて卑怯なんだろう。