「……悪い。うまく、冷静になれないんだ」




どこか疲れたように呟いて、日下先生がアスファルトに膝をつく。


あたしは何も言えなくて、ただ先生の髪がさらりと流れるのを見ていた。



あたしは、何をしてるんだろう。

あたしは、何がしたいんだろう。


必死になって、日下先生に隠してるフリをして。

本当は、心のどこかで、気づいてくれないかと、期待してる。


中途半端に、フラフラしてるんだ。



情けない。

浅ましい。



こんなに自分が自分であることを、嫌だと思ったことはないよ。




「……なんだ?」




あたしの荷物を拾っていた先生の手が止まる。


その声に、あたしはギクリとした。



下を見れば、落ちた拍子にバッグから、飛び出していた。


前世のあたしの、日記帳が。




「それは……っ!」


「日記か? 小鳥遊の……」




日記を拾い上げた時、ひらりと落ちる物があった。




頭が、真っ白になる。