「まったく、本当にびっくりしたんだから、今日は。」



帰りの車の中、アタシは今日あったことを思い出しながら隣のいつかのおでこにデコピンをお見舞いした。



「ごめんってば、陽子!」





(・・・本当に、びっくりしたんだから・・・)





いつかが溺れたこと、
すぐに木原が、いつかを助けに行ったこと。
そして・・・佐崎が呆然として全然動かなかったこと。





助けた後、木原がものすごく取り乱していたこと。




いつかの目が覚めた後は、自分が”やってしまった事”に気がついて落ち込んでるみたいだった。








(事故があったときも、すごい取り乱してたんだろうな・・・)





アタシが病室に入ったときはただ暗い顔して俯いてるだけだったけど、
事故が起こったって知ったときはきっと・・・



(それに、心臓が痛いよ・・・)



木原は”もう気にしない”なんて言ってたけど、やっぱり心の奥底じゃいつかが好きで好きでしょうがないんだ。きっと。
アタシじゃきっと、いつかには敵わない───。




(それに、佐崎も)




そう思って、佐崎をちらりと見る。
あれから佐崎も元気がなかった。



彼女を助けられなかったんだ、無理もない。










・・・ねぇ、いつか。






アンタもう気がついてるんじゃない?





木原がアンタの恋人だった、───ってこと・・。