「いっちゃん、泳がない?」




ささくんは、浮き輪を持って私を誘った。





「うんっ。行く!」





ささくんの手に引かれながら海に入る。
太陽の熱で火照った身体にはひんやりしていてとても気持ちよかった。


「あ、ここらへんから深い」
「え、あっ、ほんとだ」


足が着かなくなったところで大きめの浮き輪に入る。
実は私はカナヅチで泳げないので、浮き輪がないと不安だ。








(・・・あ、乃架ちゃん、戻ってきてるなぁ)



砂浜のシートに座る乃架ちゃんが、ぱっと視界に入った。
陽子と乃架ちゃんを挟んで、真ん中に木原くんがいる。
二人の話に苦笑しているみたいだった。





「・・っちゃん」



何で胸の奥がもやもやするんだろう・・
どうしてこんな気持ちになるの??




私、どうして───…。








「いっちゃん、!」








ちょっと大きめの、ささくんの声。

それにハッとして、私はささくんを見上げた。
黄色い太陽が、視界に入ってまぶしい。




「・・・話聞いてた~?」

ささくんがおどけたように言う。
私は全く聞いてなかったことに気付いて、申し訳なく思う。



「ご、ごめんね」
「いやいや。・・・戻って、皆で遊ぼうか!」


ささくんは、優しいなあ・・・





(なのに、私ったら・・・)






でも、どうしたらいいんだろう。
私の中に浮上した1つの”仮説”。






それをどうしていいのか分からず、私はただ悩むだけだった。