連れて来られたのはサークル棟の裏。

ここは普段は人があんまりこない。・・・という私もあまりここに来たことがない。




きょろきょろしてると、ささくんがまた可笑しそうに笑った。





「・・ささくん、こんなとこに呼び出してどうしたの?」
「うん・・・今日はいっちゃんに、俺の素直な気持ちを聞いてもらおうと思ってさ」




素直な、気持ち・・・?
私が不思議そうに首をかしげると、ささくんは遠くを見つめて喋りだす。





「俺ね、こないだいっちゃんに告白されて、すっごい嬉しかった。
だって、入学当初から好きだった子に告られたんだぜ?そりゃ嬉しくないわけ、ないよな。」
「え・・・、うそ・・・っ」




入学当初から・・・?
そんなにずっと・・・。




「ほんと。・・・でも、俺、ずっとその気持ち押し殺してきた。」
「ささくん・・・」




私は記憶を失った。
だからきっと・・・ささくんは私に言いにくかったんだろう。




「俺も、いっちゃんのことが好きだ。」
「~~~っ・・・!」






嬉しくて嬉しくて、まっすぐささくんを見れない。







「だから・・・って、また泣いてる!」
「え・・・あっ」


ささくんが、優しく私にキスをする。
そしてにっこり笑って、私にささやく。



「泣かないでって。俺は好きな子を泣かせたくないんだよ」



かぁ、と顔が熱くなって、身体中の熱が彼に触れられたところに集まってくるようだ。


「うれしい・・・私、」
「でもね、いっちゃん。」



急にささくんは真面目な、悲しそうな顔をして私を見つめる。
その黒く真っ直ぐな瞳に、私はどうしてか心が揺らいだ。




「もし他に、気になる人が出来たら・・すぐに俺と別れたっていいんだからね・・・?」




何でそんなこと、言うんだろう?
ささくんは私のこと・・・本当は、好きじゃないのかな・・・



そう思って落ち込んでいると、ささくんは私の頭を撫でてキスをする。






「ほんとは、もう手放したくなんかない。だから・・安心して。」