「記憶が、・・・なくなってる」






俺は、まさかそうなるとは思っていなかったので、驚いて声も出なかった。
よく記憶喪失って言葉を聞くけど、実際になった人が身近に出来るなんて、本気で思いもよらなかった。



「ふ、文人・・・」




恋人の記憶が無くなったんだ。
そのショックは計り知れないだろう。


でも俺も文人ほどではないと思うが、かなりショックを受けた。


俺だってずっと、いっちゃんが好きだったんだから・・・。







「頼みがあるんだ、拓也」






生気の宿らない瞳で、俺を見つめる文人。
俺は、ただただ動揺するだけだった。



「俺は正直・・・ッ・・あいつと接するのが怖い・・。
だから、お前が、いつかを支えてやってほしいんだ・・・頼む・・っ」





なぁ、文人・・・。
何でそんな残酷なことを俺に頼むんだよ






お前は知っていたのか?
俺が、彼女を好きだということを