思えば、あの時もそうだった。




事故の後───いっちゃんの目が覚めて、文人は過労で倒れた時。





「文人っ!!・・大丈夫なのか!?」




文人が倒れたと聞いて、俺は真っ先に奴の病室に乗り込んだ。
起き上がっていた文人を見つけ、安心する。





「なんだ、起き上がれるなら安心──・・・っ!?」





そう、思った。
けど実際は違かった。



文人の瞳には生気がなく、怠惰な色が支配していた。
その瞳は”あの時”のことを思い出させる。




「お、おい・・文人、どうしたんだよ・・・?」




俺は慌てて、文人の肩を掴む。
それでようやく俺に気付いたらしく、文人が俺を見上げた。


「、拓也・・・?」
「あ、ああ・・」



辛そうな表情から、俺はどこか悪いのかと思った。




「大丈夫か?気分が悪いなら先生呼んでくるぞ!」
「いや、大丈夫だ・・・。・・・・・それより、聞いてくれ」



文人がゆっくりとした口調で言う。
俺も、ただ事じゃない雰囲気を汲み取って、近くの丸イスに腰掛けて頷いた。




文人はそれを見届けてから、もう一度口を開く。




「いつかの目が覚めた」
「・・・!」

なのに、嬉しくなさそうな顔をしている。



やっぱり何かあったんだ・・
俺は心の奥がざわざわするのを押さえつけて、文人に問う。





「いっちゃん、・・・どうだったんだ・・??」





その言葉を待っていたはずの文人が、さらに辛そうな顔をしてから、
大きく息を吸って、吐いて、俺に宣告した。