「いつか、アンタ本当に、前の記憶ないの?」
「・・・、・・ないよ、残念ながら・・」
「だよねー。・・・こうなるのも、運命だったのかな」



陽子が言っていることは、よく分からなかった。




「さて、と。夕飯の支度しないと行けないし、女の子が遅くまで出歩いてると危ないよ?早く帰りな」


陽子はベンチから立ち上がって、私に振り向いてにこっと笑って見せた。



「陽子も女だってこと、忘れてるでしょ?」
「え、アタシって女だったの!?うっそーん」
「はいはい・・・」



大げさに冗談を言う陽子。
陽子が知っていて私が知らないこと。


帰っていく陽子の背中を見つめながら、ちょっと羨ましいと思ってしまった。










昔の記憶。







もしも思い出せるなら、思い出してみたい。
でも、それはそれで怖い。


だから、今のままで満足だ。
思い出さなくて良い、過去に囚われることなんてない。



でも、もしも思い出せたなら・・・
私はささくんと今みたいな関係だったのだろうか?













それとも・・・・・