婚約指輪は帰ってからのお楽しみだと言われた。


両家の両親にも紹介済みで、両親は近所で堅実な周吾との婚約をあたし以上に喜んでくれた。


理解ある恋人と適齢期に結婚。


実際、周吾には何の不満も無かった。


ただ、何だろう。この何とも言えない閉塞感はー。


あたしは1人娘で親の期待を一心に受けて育った。


親の期待というのは、別に出世するとか金持ちと結婚するということではない。


唯一の望み。それは家を継いでもらうことだった。


周吾は3人兄弟の末っ子で、婿養子に来てくれるということも両親が周吾を気に入った理由の一つだった。


本当は東京の大学か専門学校に行って、将来は航空関係の仕事に就くのが夢だった。


けれどそれは、あたしを手元に置いておきたい両親の反対に遭ってあっけなく散った。


だから少しの反抗の意味も込めてここニュージーに来たわけだけど、あまり状況は変わらない。


両親が心配するので週に一度は日本に電話をしている。