「ねぇ、母さん」
竜馬が風呂に入っているあいだ、夏巳が朝ごはんの支度をしている由依(ゆい)に言った。
「何?あ、夏巳、これ運んで。あと、寝癖おちてないけど?」
由依は夏巳にコップやごはんの乗ったおぼんを渡しながら言った。
「兄ちゃんチョコもらえると思う?」
夏巳は馬鹿にしたように言う。
由依は笑った。
「今年はもう2年生だからね~もらえるといいわね~」
夏巳も笑って言った。
「え~兄ちゃん今年もどうせもらえないって~!!賭ける?」
「俺で遊ぶな…」
洗面所から出てきた竜馬が言った。
風呂上がりとは別に少し赤くなっている。
「もしかしてなんかあるの?」
夏巳が聞いてきたがほっといた。
竜馬と夏巳は自分の席に座った。
「いただきます」
2人ともそう言ったが、竜馬の方が少し早かった。
あとから由依もきた。
「あ…これうまい」
竜馬が玉子焼きを食べて言った。
「え、本当!?」
由依も自分で食べる。
「うん!!いつもと違う!!」
夏巳が大げさに言う。
由依は料理があまり上手くなかった。そのためたまにしか手料理を作らないが、そんなときは竜馬と夏巳が交代で作ることになっていた。
竜馬も、レパートリーは少ないがそこら辺の高校生よりは上手い自信がある。


それから竜馬は着替えて、7時には家を出た。
「いってきます」
夏巳が誰かに渡すのだろう、ピンクと黄色の小さな袋の入った紙袋が、玄関の片隅に置いてあった。