刻一刻と迫る卒業。

ありがとうって、
言えてない。

さようならって、
言えてない。


何も、
伝えられてない…。





あたしは
窓から見える桜の蕾に
気付かないふりをして、
理科室の実験になることを、ただただ願った。



「――…CO2が、このように反応し…」


黒板の前で、淡々と説明する先生。

あ…、まだCO2の所か。
そんなの良いから、
早く理科室に行きたい。

あの、机の上で
穏やかな会話をしたい。



なのに…、神様は酷い。

あたしとあの人を
引き離して行く――。