『今は話したくない』
『…そっか。じゃまた今度話そう』
小林くんは、帰り際にピンクの紙袋を美保に渡した。
『なに?これ』
『駅前のクッキー。美保好きだったよね?これ食べて機嫌なおして』
小林くんが美保に元通りになってほしくてやったこと。
美保の為を想ってやったこと。
だけど、これがいけなかった。
この行為が、美保に火をつけてしまったんだ。
『…いらない』
『え?』
『いらない!こんなの!』
美保はクッキーを小林くんに突き返した。
小林くんのすごく驚いた顔も、美保はショックだったんだって。
美保はね、モノで謝ってほしくなかったんだって。
ちゃんと言葉で、態度で。
機嫌なおしのクッキーは、小林くんにとってあのことがこのくらい軽いものだと象徴しているようなものだったんだね。
美保にはそう感じてたんだ。