「別に何もないよ」



何かっていったら、やっぱりアレ…だよね?


『カワイイ』



「何もないって顔じゃないわよ」

「う、うるさあい!」

「本当、杏って純粋よね」



純粋とか、よくわからないけど。


だけど正直、あの日のことは忘れられない。


あんなにドキドキしたのはあの日が初めて。


ただ、カワイイって言われただけなのにね。



「で、何があったの?」

「え?美保にはもう言ったじゃん」



私はもう一度、あのときのことを話した。


すると美保は、ポカンとした顔で私を見る。



「え…そ、それだけ?」

「そ、それだけだけど…?」

「それで、あんなに顔真っ赤にしてたの?」



えっ…私、そんなに赤かったの?


なんだか恥ずかしくなって、もう一度頬を両手で包み込んだ。