『ねぇ、貴女の名前を教えてくれない?』
―――何気ない一言だったのに、それがあまりにも嬉しくて。
私の名前を聞いてくれた、たったその一言だけだけど。
それがあまりにも温かい言葉だったから。
遠子さんと同じ声で呼んでくれたから。
「当たり前でしょ!!声かけるに決まってるでじゃない!
私、前から気になってたんだー」
何故か自慢気な雫。
というより…ん?
「“前から”?」
以前、会ったっ事があっただろうか?
…ダメだ、全然思い出せない。
「あー空は知らなくて仕方ないよ。
バイト3つ。…かけもちしてるでしょ?」
「!
………どうしてそれを?」
雫の言葉に私は驚きを隠せない。
「本屋さんに、ファミレス、後スポーツ用品店」
!!
………全部正解だ。