「わたしには一つ年上の姉がいたの ちょうど彼女が高校生の時、喘息の発作で亡くなった」 コーチは目頭を押さえながら続けた 「だから、ゆうくんがリンクに走ってきて、吸入器を取りに来たって言ったときは心臓止まるかと思った」 何も言えなかった 「でもあなたは、雨のなか倒れて生死の境をさ迷っても、戻ってきてくれた 姉が跳べなかったトリプルアクセルを跳んでくれた 今のあなたなら大丈夫」 そう言ってわたしを抱きしめてくれた