「あ~あ、旅行ももう終わりかぁ。なんだか寂しいや」
「あ? なんで寂しいんだよ。今日は家に帰るのか、お前」
 さも当然のように、アキラは言い切る。つまり、「お前、俺ンチに泊まるんだろ?」って言っているんだよね、これ。

「だって、迷惑じゃないの?」
「バカヤロ、迷惑ならここに連れて来ねえよ」
 やっぱり物凄く強引な奴だ。「一緒にいろよ」とか「帰るなよ」とか、もっとあたしがときめく言葉が幾らでもあるだろうに、そうじゃなくて帰らないってことを前提にしてる。

 駐輪場までの道筋、擦れ違う人々はあたし達を見てなぜか微笑ましそうな表情をしていた。不思議とみんなから祝福されているような気がした。

「帰りに美味いソフトクリームの店に連れてってやるよ。結構有名らしいぜ、そこ」
「あ、それって嬉しいかも」
 顔を見合わせて笑い合う。

 あたしはあたしでいいんだ。そのままのあたしをアキラは好きでいてくれるんだから。そしてあたしもそのままのアキラが好き。無愛想な時も、子供みたいな目の時も、寂しそうな時も、求めてくれる時も、全てのアキラが好き。

 彼に肩を抱かれながら歩く。それが今のあたしとアキラの距離だと思った。