昨日の夜と違うことは、言葉にはしていなくても互いの想いが伝わっているということ。たったそれだけの違いなのに、あたしは彼の存在の重さを感じていた。

 お互い素肌になり向かい合って座り見詰め合う。やはりお互いに言葉は何もなかった。今のあたしには、言葉が大切だとは思えない。言葉がなくても伝わるものがあって、それに気づいた時の悦びは言葉で知ることよりも大きいと思った。

 彼の手のひらがあたしの乳房に触れて、まるで遊んでいるかのように敏感な部分を転がす。それはあたしの背筋に快感の漣を起こして、あたしは小さく吐息を漏らした。

 あたしは彼の敏感なそれに手を伸ばして、優しく触れる。もう硬くなっているそれに、あたしは身体が火照るのを感じた。
 アキラが顔を顰めて小さく荒い息を吐いた。その表情がとても愛しくて、あたしはそのままアキラを布団に押し倒した。
 もう我慢できなくなっていた。唇を重ねて舌を絡めると、彼が吸う煙草とコーヒーの香りがして、それが更にあたしを煽る。

 あたしは今、誰よりも大切なひとに触れているんだ。抱かれているんだ。こんな幸せ、今まで感じたことない。

 互いの大切な部分を晒し合って、互いにそれを愛撫する。彼の舌先がそれを転がす度に、あたしの身体は強い快感を得て小さく震えてしまう。
 彼の愛しいそれを舐めている、たったそれだけで幸せな自分がいた。あたしには何もないけど、あたしは彼を悦ばせてあげられている。それはあたしにとって、何よりも嬉しいことだった。

 何もないあたしを、彼は求めてくれている。

 誰にも心を許さないような尖った目、皮肉めいた口元にはジョーカー、口を開けば突き放すような強い言葉、そのひとつひとつが本当は彼が弱くて寂しがり屋のひとだと教えてくれた。
 夢中になって彼への愛撫を続ける。どんなに強い快楽も、彼とのこの行為には敵わない。

 気持ちの昂ぶりのままに、あたしは彼からの愛撫に喘ぎ、そのまま絶頂に達してしまった。そしてその瞬間、彼のそれから熱いものが放たれた。

 見詰めあいながら一つになる。
 もう、何も怖くない。もう、ひとりで泣くこともない。
 あたしにはアキラがいる。アキラがずっと傍にいてくれる。

 あたし、オリジナルを求めてよかった。あたしだけのオリジナルはまだ見付かっていないけど、それでもアキラの傍にいられるのは、あたしがそれを追い求めたから。
 絶頂に向かって上り詰めていく。

 それは、やっと手に入れたあたしの居場所だった。