アキラに誘われて夜の散歩に出掛けた。小さな宿場町だから、周囲の灯りも少なくて、アキラに言われて夜空を見上げるとそこは満天の星空だった。その美しさとスケールは圧倒的で、星の海に飲み込まれそうな気がして、少し怖くなってしまったほとだ。

 思わず、あたしはアキラと腕を強く組んだ。

「凄いだろ、星空」
「うん、凄すぎて怖いくらい……」
 そっと彼の横顔を見詰める。夜空を見上げるその姿は、やっぱり彼がオリジナルだとあたしに思わせる。

「ここに来る度に、夜は必ず星空を見上げるんだよ」
「綺麗だもんね」
 もう一度、星空を見上げる。まるであたしとアキラの為に輝いていてくれているように感じてしまう。

「いや、そうじゃねえんだ。これだけ山のように星が散らばってんだ。上を向いて目指してりゃ、きっとそのひとつだけでも掴めるって思えるからな」
 その言葉に驚いて、あたしはまた彼の横顔を見詰めてしまった。それはアキラが初めてあたしに弱音を吐いた瞬間だったから。

 星空を見上げるその姿が、あたしにはあまりにも寂しげに映った。あたしはオリジナルを追い求めていた時、その孤独感に泣きたくなった。

 だったら、アキラは――?

 アキラの生き方は間違いなく世間一般が言う「普通」ではない。それを認めてくれるひとが多くないことくらいはあたしにも想像がつく。それなら、ずっと一人でそれを追い求めていたアキラの寂しさはどれほど大きなものだったのだろうか。

「お前に初めて会った時、お前にキツイこと言ったろ。あれはな、お前に対してっつーよりも、俺自身に対して言ったんだ」
 あの時、もしかしたらアキラも孤独感に苛まれて負けそうになっていたのかもしれない。いや、周囲を威嚇するみたいにあんなに尖っていたそれが、彼の苦しみを表現していたんだ。