家族風呂を出てから、あたしとアキラは別に何か愛を囁き合う訳でもなく、浴衣で一緒に散歩に出て、途中のお茶屋さんで和菓子を食べたりしてゆっくりと過ごした。
時々視線が合うと、アキラはいつものようにニッと笑ってくれる。あたしは思わず視線を逸らして俯いてしまう。
家族風呂でのあのやり取りは、もう自分の想いを告げてしまったようなものだ。だけど、それでもまだあたしは迷っていた。
この想いのままアキラに身を委ねてしまえたら、どんなにいいだろうと思う。でも、どんなに頑張っても、あたしはアキラに見合わない。アキラを好きになればなるほど、アキラの色々な面を知れば知るほど、どうしてもあたしみたいな女が一緒にいていい男性とは思えなくなる。
アキラが自動販売機で今日何本目なのかも分からない缶コーヒーを買って、また一気に飲み干した。幾らなんでも飲みすぎだと思った。確か、缶コーヒーって糖分とか凄かったはずだ。あたしもコーヒーは嫌いじゃないけど、缶コーヒーは太りそうなのであまり飲まないようにしていた。
こんなに飲んでいたら、きっと病気になってしまう。
「アキラ、缶コーヒー、本数減らそうよ」
「ん? 俺、そんなに飲んでるか?」
「飲み過ぎだよ、どう考えても身体に悪いって……」
「……な、何本までならいい?」
「三本までにしようよ」
「わ、分かった」
アキラは苦笑しながら、あたしの提案を受け入れてくれた。その瞬間、あたしは罪悪感に苛まれる。こうやってアキラの自由を少しずつ奪って、最後にはオリジナルの探求すら奪ってしまう。
それが怖い。アキラにはアキラの生き方があって、それが彼の魅力につながっているはずなのに、それをあたしが奪っていいはずがない。
こんな我侭な自分が、無性に嫌になる。あたしは自分がオリジナルでもないくせに、どうしてこんな酷いことをしてしまうんだろう。
「……ごめん、あたしにそんなこと言う権利、ないよね」
その瞬間、軽く、本当に軽く、アキラがあたしの頭を叩いた。驚いて彼に視線を向けると、彼は明らかに怒っていた。
でも、どこか悲しげで――
「……バカヤロ」
そう呟いて、アキラは早足で歩いていってしまった。あたしは彼の背中を見詰めて、強い喪失感に立ち尽くした。
時々視線が合うと、アキラはいつものようにニッと笑ってくれる。あたしは思わず視線を逸らして俯いてしまう。
家族風呂でのあのやり取りは、もう自分の想いを告げてしまったようなものだ。だけど、それでもまだあたしは迷っていた。
この想いのままアキラに身を委ねてしまえたら、どんなにいいだろうと思う。でも、どんなに頑張っても、あたしはアキラに見合わない。アキラを好きになればなるほど、アキラの色々な面を知れば知るほど、どうしてもあたしみたいな女が一緒にいていい男性とは思えなくなる。
アキラが自動販売機で今日何本目なのかも分からない缶コーヒーを買って、また一気に飲み干した。幾らなんでも飲みすぎだと思った。確か、缶コーヒーって糖分とか凄かったはずだ。あたしもコーヒーは嫌いじゃないけど、缶コーヒーは太りそうなのであまり飲まないようにしていた。
こんなに飲んでいたら、きっと病気になってしまう。
「アキラ、缶コーヒー、本数減らそうよ」
「ん? 俺、そんなに飲んでるか?」
「飲み過ぎだよ、どう考えても身体に悪いって……」
「……な、何本までならいい?」
「三本までにしようよ」
「わ、分かった」
アキラは苦笑しながら、あたしの提案を受け入れてくれた。その瞬間、あたしは罪悪感に苛まれる。こうやってアキラの自由を少しずつ奪って、最後にはオリジナルの探求すら奪ってしまう。
それが怖い。アキラにはアキラの生き方があって、それが彼の魅力につながっているはずなのに、それをあたしが奪っていいはずがない。
こんな我侭な自分が、無性に嫌になる。あたしは自分がオリジナルでもないくせに、どうしてこんな酷いことをしてしまうんだろう。
「……ごめん、あたしにそんなこと言う権利、ないよね」
その瞬間、軽く、本当に軽く、アキラがあたしの頭を叩いた。驚いて彼に視線を向けると、彼は明らかに怒っていた。
でも、どこか悲しげで――
「……バカヤロ」
そう呟いて、アキラは早足で歩いていってしまった。あたしは彼の背中を見詰めて、強い喪失感に立ち尽くした。