ご主人の打った手打ち蕎麦はとても美味しくて、あたしは一気に食べてしまった。それを見ていたご主人が、「はい、おごり」ともう一枚サービスしてくれた。
「美味いだろ、ここの蕎麦」
「うん。あたしね、手打ちのお蕎麦って食べたの初めてなの」
「なんだそうなのか。なら来て良かったな」
「うん、ありがと」
あたしは夢中になってお蕎麦をすする。いつもファーストフードとかばかりで、こういう美味しさは初めてだった。
「しかし、お前には勿体ない子だな」
「なんだよ、それ」
「いや、いい子じゃん。てか、お前何年振りだっけ、女が出来たの」
あたしの心臓が止まりそうなことを、ご主人は唐突に話し出した。あたしが知らないアキラの女関係。それをご主人は知ってるみたいだ。
「うるせぇよ、黙ってろ」
「5年、いや6年振りじゃねえか?」
「黙れって、いらんこと言うな、お前」
アキラがご主人を睨み付ける。だけどご主人はあっけらかんとしていて、そのままあたしにこう言った。
「こう見えて、実はめっちゃお堅いんだよ、こいつ。処女かっつーの」
「いい加減しろよ、お前!」
「付き合っても長続きしねぇしよ」
「ほ、本当ですか、それ……」
思わずあたしは、ご主人にそう訊いてしまった。ご主人はにこにこと笑いながら、「本当だよ」と応えてくれる。その瞬間、アキラと目が合った。アキラはいつものような無愛想な仏頂面じゃなくて、照れ臭そうに顔を顰めている。その表情があまりにも可愛くて、あたしは思わず笑ってしまった。
「お前まで笑ってんじゃねえよ」
「だってアキラ、もしかしてずっと女日照りだったの?」
「適当な遊び女なんざ、作る甲斐性はもうねえよ」
本当にあっさりと、アキラはそう言い切った。むっつりとしたいつもの無愛想顔に戻る。そしてまだ蕎麦をすすりだす。
あたしは言葉を失って、俯きながら同じようにお蕎麦をすすった。
ご主人はそんなあたしとアキラを、楽しげに眺めていた。
「美味いだろ、ここの蕎麦」
「うん。あたしね、手打ちのお蕎麦って食べたの初めてなの」
「なんだそうなのか。なら来て良かったな」
「うん、ありがと」
あたしは夢中になってお蕎麦をすする。いつもファーストフードとかばかりで、こういう美味しさは初めてだった。
「しかし、お前には勿体ない子だな」
「なんだよ、それ」
「いや、いい子じゃん。てか、お前何年振りだっけ、女が出来たの」
あたしの心臓が止まりそうなことを、ご主人は唐突に話し出した。あたしが知らないアキラの女関係。それをご主人は知ってるみたいだ。
「うるせぇよ、黙ってろ」
「5年、いや6年振りじゃねえか?」
「黙れって、いらんこと言うな、お前」
アキラがご主人を睨み付ける。だけどご主人はあっけらかんとしていて、そのままあたしにこう言った。
「こう見えて、実はめっちゃお堅いんだよ、こいつ。処女かっつーの」
「いい加減しろよ、お前!」
「付き合っても長続きしねぇしよ」
「ほ、本当ですか、それ……」
思わずあたしは、ご主人にそう訊いてしまった。ご主人はにこにこと笑いながら、「本当だよ」と応えてくれる。その瞬間、アキラと目が合った。アキラはいつものような無愛想な仏頂面じゃなくて、照れ臭そうに顔を顰めている。その表情があまりにも可愛くて、あたしは思わず笑ってしまった。
「お前まで笑ってんじゃねえよ」
「だってアキラ、もしかしてずっと女日照りだったの?」
「適当な遊び女なんざ、作る甲斐性はもうねえよ」
本当にあっさりと、アキラはそう言い切った。むっつりとしたいつもの無愛想顔に戻る。そしてまだ蕎麦をすすりだす。
あたしは言葉を失って、俯きながら同じようにお蕎麦をすすった。
ご主人はそんなあたしとアキラを、楽しげに眺めていた。