お昼過ぎになって、バイクは途中の小さなお蕎麦屋さんに入った。あたしに何も訊かないで決めてしまう辺り、アキラらしくて笑ってしまった。
そのお蕎麦屋さんは本当にこじんまりしたお店で、でも外観がなんというか、妙に雰囲気のあるお店だった。
店内に入ると、お店のご主人らしい若い男性が、元気な声で「いらっしゃい」と言い、天真爛漫な笑顔を見せてくれた。
「よっ、食べに来たぜ」
「おう、アキラ。なんだ女連れかよ」
「ああ、ザル二枚、頼むわ」
「毎度」
少なくともお店のご主人はアキラと接点があるような感じには見えなかった。アキラみたいなアクの強い個性は感じられなかったし、何よりもアキラみたいに無愛想じゃなかった。
「……知り合いなの?」
奥の座敷に座ってからアキラに尋ねると、彼は照れ臭そうに笑いながら「ガキの頃からの連れだ」と言った。
「でもアキラみたいに悪そうじゃないよ」
「俺はお前の中で、一体どういう人間になってんだ……?」
「悪い中年男」
「素直な女は可愛いぞぅ」
アキラは蕎麦を茹でているご主人に視線を向けて、楽しげに笑みを浮かべている。なんというか、弟とか妹を見ている感じだ。ご主人が働いている姿を微笑ましく眺めているみたい。
「嫁さんはどうしたんだよ」
アキラがご主人に向かってそう問うと、ご主人は照れ臭そうに「ハラボテなんだよ」と応えた。ハラボテって、妊娠してるってことだよね、確か。
「そっか、よかったな。今度祝い送るわ」
「気にすんな」
不意にアキラがあたしの顔をじっと見た。そして唐突に「俺らも子供作るか」と真剣な顔で言った。
そのお蕎麦屋さんは本当にこじんまりしたお店で、でも外観がなんというか、妙に雰囲気のあるお店だった。
店内に入ると、お店のご主人らしい若い男性が、元気な声で「いらっしゃい」と言い、天真爛漫な笑顔を見せてくれた。
「よっ、食べに来たぜ」
「おう、アキラ。なんだ女連れかよ」
「ああ、ザル二枚、頼むわ」
「毎度」
少なくともお店のご主人はアキラと接点があるような感じには見えなかった。アキラみたいなアクの強い個性は感じられなかったし、何よりもアキラみたいに無愛想じゃなかった。
「……知り合いなの?」
奥の座敷に座ってからアキラに尋ねると、彼は照れ臭そうに笑いながら「ガキの頃からの連れだ」と言った。
「でもアキラみたいに悪そうじゃないよ」
「俺はお前の中で、一体どういう人間になってんだ……?」
「悪い中年男」
「素直な女は可愛いぞぅ」
アキラは蕎麦を茹でているご主人に視線を向けて、楽しげに笑みを浮かべている。なんというか、弟とか妹を見ている感じだ。ご主人が働いている姿を微笑ましく眺めているみたい。
「嫁さんはどうしたんだよ」
アキラがご主人に向かってそう問うと、ご主人は照れ臭そうに「ハラボテなんだよ」と応えた。ハラボテって、妊娠してるってことだよね、確か。
「そっか、よかったな。今度祝い送るわ」
「気にすんな」
不意にアキラがあたしの顔をじっと見た。そして唐突に「俺らも子供作るか」と真剣な顔で言った。