「うっ、くっ……」
 駄目だと思いつつも、思わず泣いてしまった。あいつはそんなあたしをじっと見詰めて、もう一度唇を重ねる。そして指先でその涙を拭ってくれた。

「や、約束、信じて、待って、たんだよ、ずっと……」
「ああ、分かってる。ごめんな」
「あんた、みたいに、なりたいって……! だから、ずっと、オリジナル、見付けようって……!」
 責めたい訳じゃないのに、本当はもっと伝えたいことがあるはずなのに、あたしはあいつの身体に爪を立てながら、形にできないぐちゃぐちゃな感情をぶつけた。

「お前の汗の匂い、忘れてねえよ」
「そ、そんなの……」
「お前はお前なんだ。それ以外なんざどこにもいねえよ」
「あたし、馬鹿ばっか、やってたよ……?」
「ああ、だからここにいるんだろ。なら、それでいいじゃねえか。お前は今、ここにいるんだ。俺の腕の中に、な」

 思わずあいつの目を見詰めてしまった。そこには信じられないほど優しくて、暖かい目をしたあいつがいた。
 その瞬間、あたしの中の理性が消し飛んだ。もうどうなってもいいと思った。今、目の前にいるあいつがもしも嘘を吐いていたとしても、今だけでも愛してもらえるのならば、全てを失って構わないと思った。

 それでもあいつは、あたしを信じられないほど優しく、甘く、抱いてくれた。