「あっ、いっ、いいっ」

 自分から漏れるその吐息が信じられないほど甘いことに、あたしは気付いている。その甘さが、あたしがどれだけこの人を求めていたのかという証になってしまっていた。

 どこかで気付いていた。
 カラオケボックスであたしを強引に抱いた先輩に、あたしはこのひとが欲しいだけだと言った。そしてそれはこのひととは対等でいたいと思っていたからで、このひとが女を求めるとしたらそういう女だと思っていたからだ。
 そして、そこには恋だの愛だの、そんな複雑でややこしい感情はあってはならないんだと思っていた。だから、絶対に好きにはならないと決意していた。

 それなのに、優しく触れられた瞬間、あたしは自覚してしまった。あたしは女としてこの人が好きなんだということに。いや、きっと出逢ったあの時から、もう好きだったのだ。

 指先が身体を這い回り、重ねた唇には舌が侵入してきて絡め捕られ、あたしの自由を全て奪っていく。その拘束は苦しくもあり、そして嬉しくもあった。

 どうしてこのひとが好きなのだろう。あたしはこのひとのことを何も知らない。出逢ったあの時もきっと気紛れで抱いていたのだろうから、遊びにすぎないだろう。それなのに、どうしてこんなに惹かれているのだろう。そしてどうしてこんなに好きなんだろう。