「どうした、なんで泣いてんだ、お前」
 その時、不意に掛けられた言葉。その声をあたしは覚えている。少し掠れていて、呻くような低い声。強さと獰猛さと純粋さを感じさせる尖った音色。

「久しぶりだな」
 あたしの前に、ずっと求めていたあいつがいた。皮肉めいた口元に咥えたジョーカーも、全てを否定するような眼も、胸元のフレイムパターンのタトゥーも、あの頃と何ひとつ変わらない。

 ただ、あたしを見詰めるその目には信じられないほどの優しさが宿っていた。

 あたしはあいつの胸に飛び込んで、大声を上げて泣いた。