覚悟を決めてページをめくる。

 そしてその写真を見て、あたしは言葉を失った。そこには一枚の写真が貼られていた。とても若い父と母、そして母に抱かれている可愛い服を着たあかちゃん。父と母は、とても幸せそうに、満面の笑みを浮かべていた。
 写真の下に、「ヲトメ、2ヶ月」とメモが貼ってあった。

 あたしはその写真を抱いて、震えながら泣いた。あたしはきっと、望まれてできた子供ではなかった。だけど、それでも産まれたあたしはほんの何ヶ月かだけでも、あの屑のような両親を幸せにしていたんだと分かった。
 もしかしたら父と母との絆は、深い溝の底でつながっているのかも知れないと思った。ただそんな甘い幻想には全く意味がない。母には若い男がいるし、父は相変わらずギャンブルに狂っているのだから。

 ただ、あたしの存在は無価値ではなかった。
 それを知ることができただけでも、これを開く意味があったのかもしれない。
 今のあたしにはあいつしか男として見ることができないけれど、いつか誰かの妻になって子供を産むかもしれない。その時、あたしはその子を愛してあげたいし、あたしみたいな境遇にはしたくない。

 不意にあたしはあることに気付き、もう一度、最初からアルバムをめくる。
 あたしは何も分からない子供だから笑っているんだと思っていた。
 違う、きっと違う、幸せだから笑っていたんだ。いや、そうなんだと思いたいし、信じたい。

 埃を被っていたくらいだから、このアルバムを開くのはあたしが最後だろうと思う。だから、この幸せな写真は悪いけれどあたしがもらっておこう。
 出て行くのならばちゃんと父と母と話した上で出て行こう。そして出て行く時には、二人に「今までありがとう」と言って出て行こう。

 わずかでも幸せをありがとう、と。