「……ラーメン作ったんだけど、食べる?」
「ああ? 私はトンコツ嫌いだっていつも言ってんだろ」
「だって、これしかなかったんだんだから仕方ないじゃん」
「二つ作ったのかよ……仕方ねえな、よこせよ」
 奪い取るようにどんぶりを手に取ると、母は「おえ、油っこい」と文句を言いながらもラーメンを食べてくれた。

「ねえ、もう彼氏んところに逃げなよ」
「あ? 私を追い出したいのかよ、あんた」
「だって、父さんと一緒にいたって、幸せになんかなれないんだろ」
 あたしは母が嫌いだ。こんな糞みたいな家、早く出て行きたいと思っている。でもそれと母の幸せは関係がない。あたしはあたしの意思で、いつか出て行くだろう。ならは母が自分の意思で幸せを求めて何が悪いだろうか。あんなギャンブル中毒の借金暴力男と一緒にいたって、母はずっと不幸のままだろう。

「そん時がきたら、出て行くさ」
 母はその時、久しぶりに優しく笑ってくれた。あたしはやっぱりこの母の娘で、そして母の手のあたたかさは嬉しかった。