「あいつはドラッグにも真実があると言ってたよ。それを信じていた俺が馬鹿だったんだ。あいつの言う真実ってのは、単なる禁断症状を誤魔化す為の詭弁だったのさ……」
 今のあたしがウリの先に真実がないと思っているように、それから彼はドラッグの先に真実はないと悟ったのだろう。

 こんなナリをしているしウリなんかしていたんだから、何度かドラッグの絡んだセックスをしたことがある。意識が飛ぶほどに感じてしまい、最後には失禁した上で失神してしまった。だけどあたしはそのセックスが怖かった。気持ちがいいという感覚を突き抜けて気が狂ってしまいそうだったからだ。

「自分に酷い仕打ちをしていた母親に看病されながら、最後は何も分からなくなって壊れちまったよ。それがあいつの求めていた真実なのかは分からんが、少なくとも俺は間違いだと思った」
 彼の目に帯びる悲しみが伝わってきて痛い。
 あたしは彼の胸元に舌を這わせ、フレイムパターンのタトゥーをなぞった。あたしに何ができるのかなんて分からないし、人生経験のないガキになにを言われても腹立たしいだけだろうと思う。あたしが彼に何かしてあげられるのだとしたら、今はただ抱かれてあげることくらいしかできない。

 胸元から舌を這わせ硬い腹筋をなぞり、そのまま彼のそれを口に含む。あたしにとって彼の全てが媚薬になってしまう。彼のどんな姿も受け止められると思う。彼からのどんな行為も受け入れられると思う。
 彼はまるで悲しみの全てをぶつけるかのように、あたしを抱いた。