徹平のことだけを考えていた頃には想像もしなかった。
自分が、徹平以外の男の人と歩く姿なんて。
でも、不思議と嫌じゃない。
航太くんとなら、二人でも大丈夫。
なんでなんだろう。
好きなのか、と聞かれたら、間違いなく、好きではない。と思う。
徹平に感じていたようなときめきはないし。
なにより、知り合って間もなくて、相手のことを何も知らないのに、好きになんてなるはずない。
ぐるぐるとそんなことを考えていると、右手を強く引かれた。
「あぶねっ」
クラクションとともに、航太くんの焦った声がした。
「ぎゃっっ」
目の前を車が通りすぎていって初めて、赤信号を渡ろうとしていたことを自覚した。
「ご・・・ごめん・・・」
路地から大きめの車道へと抜ける道。
もう一歩遅かったら・・・
想像して、今更ながら体が震えた。
大きく深呼吸して、気持ちを落ち着かせる。
と、そこで、目の前に航太くんの胸板があることに気付いた。
抱きついてる!?
「~~ごめんっ!!」
慌てて離れると、航太くんが長い溜め息をついた。