「今日は私が払う!」
「この間のは冗談だって。俺が払うから。」
「いいの!今日は私が払うの!」
断る航太くんを押しきって、私が会計に進んだ。
「頑固者。」
小さく呟いた航太くんを目の端で睨む。
「こわっ。」
わざとらしく店の外へ逃げていく後ろ姿に、ちょっとかわいいな、なんて思ってしまった。
「ありがとうございましたー」
外に出ると、航太くんがガードレールに腰かけて待っていた。
「ごちそうさま。」
立ち上がってこちらへ歩いてくると、ぺこりと頭を下げる。
帰ろうか、と歩きだした背中を追う。
すっかり見慣れた背中は、なんだか私を安心させてくれる。