おいしい鳥料理をおつまみに、お酒がすすむ。

いつもよりちょっと飲みすぎたのか、ほろ酔いでふわふわ心地良い気分。

「お腹いっぱーい!」

お腹を押さえてため息をついた私に、航太くんが笑った。


「そろそろ出ようか。」

「うん。」

立ち上がると、少しよろけた。

「大丈夫かよ。」

苦笑しながら航太くんがコートを渡してくれる。

「大丈夫!」

笑顔で答えたものの、コートの袖にうまく腕を通せなくて、もたついてしまった。

「大丈夫じゃないみたいだけど?」

「大丈夫だってば!みちるや琢磨とは違いますからー」

なんとか両腕を通して、座敷から降りた。

航太くんは笑いながら前を歩いている。
なんだか最近この後ろ姿をよく見ている気がする。

見慣れた景色になりつつあることが、不思議だ。

「おごるから。」

ドアを指差して、先に出ろ、と合図される。

でも‥、と慌ててお財布を取り出そうとした手を、軽く押さえられた。

「いいから。」

レジで待つ店員さんの姿が見えて、ここで時間を取るのは悪い気がして、私は手を引っ込めた。


航太くんは満足気に頷いて、レジへ向かう。

私は仕方なく、外で待つことにした。