歩き出して5分ほどして、小さなビルの前で立ち止まった。
「ここ?」
私のイメージしていたものとは全然違う外観。
焼き鳥屋さんというと、木造建築風の建物で、赤いのれんがかかっていて、大将が、へいらっしゃい!的な‥。
でも今目の前にあるのは、モダンな雰囲気の外装に、ガラスに木組みがはめこまれたドア。
もちろんのれんはなくて、木で作られた看板が出ている。
「入ろう。」
航太くんがドアを押して、中に入っていく。
ちょっとわくわくしながら私も店内に入った。
「へぇー‥」
薄暗い店内は、白を基調にシンプルなつくりだった。
「いらっしゃいませ。」
私服にエプロン姿の女の子が挨拶してくれる。
入ってすぐのカウンターやテーブルを通り過ぎ、奥にある小さなお座敷に通された。
長細い座敷を、すだれで間仕切りして、隣同士が見えないようにしてある。
座敷が3組分、カウンターが5席、4人がけほどのテーブル3つの、こじんまりしたお店だ。
でも狭い感じはなく、不思議と居心地が良い。
キョロキョロと見回していると、航太くんが心配そうに声をかけてきた。
「こういうとこ苦手?」
「ううん、良いお店だなーと思って。こんなところ知らなかった!」
少し興奮しながら言うと、航太くんは目を細めて笑った。
「ならよかった。」
もともと気取ったレストランなんかは苦手で、居酒屋みたいな雰囲気の方が性に合っている。
「味は保証する。」
得意気に笑いながらメニューを渡された。
「鶏にもお刺身ってあるんだね!」
初めてのメニューが色々あって、迷ってしまう。
店員さんに来てもらって、オススメを聞きながら、二人で色々と注文した。