6時5分前に駅についた。

人を待たせるのが苦手な私は、いつも待ち合わせの5分前には行くようにしている。

「あ‥」

改札を出てすぐのコンビニの前、大きめの柱のところで、ポケットに手を入れて立つ航太くんの姿が見えた。


こうして見ると、みちるがかっこいいと言っていたのがよくわかる。

短めの前髪は今日も斜めに流されていて、ちょっと無造作にセットされた髪型がよく似合っている。

ジーンズにVネックのTシャツ。上から薄手のセーターを羽織っただけ。

すごくシンプルな取り合わせなのに、さらりと着こなしていて、オシャレ。

「今日は二人きりなんだよね‥」

なんか今更だけど緊張してきたかも。


大きくひとつ、深呼吸して、ゆっくりと航太くんに近づいた。


「こんばんは‥」


恐る恐る声をかけると、俯き気味で目を閉じていた航太くんが目をあける。


「‥来てくれたんだ」

ふ、と笑う表情にドキッとする。

「え‥。私、わかった、ってメールしなかった?」

「したけど。
ホントに来るかわかんなかったから。」

「何それ‥私ってそんな信用ないの?」

「違うって。
‥来てくれて嬉しいってこと。」

行こうか、と航太くんが先を歩き出す。

今までの意地悪なイメージと違って、笑顔で優しい口調。
なんだか調子が狂う。

「どこ行くの?」

歩き出した背中に訊ねる。

航太くんはちらりとこちらを振り返った。

「やきとり好き?」
「焼き鳥‥?
うん、好き。」

「じゃあ決まり。」

にこっと笑ってさっさと歩き出す。

こういうところは今までのイメージ通り。



歩いていくのは私の家とは反対方向。

こちら側にはあまり飲食店もスーパーもないから、ほとんど来たことがない。


「こんな風になってたんだ‥」


閑静な住宅街。


マンションやビルが立ち並ぶ中に、小さな雑貨屋さんや、美容室もある。

いつも私が見ている駅向こうは、賑やかで飲食店が立ち並んでいる。

対してこちらは落ち着いた空気で、静かだ。

駅をはさむだけでこんなに雰囲気が違うんだなぁ‥。