「ごめん、ちょっとトイレ」

みちるに声をかけて、席を立った。

いっそこのまま帰れたらどれだけ楽だろう。

会場の扉を閉めた途端、ずっとこらえていたため息がこぼれた。

無理矢理貼り付けていた笑顔のせいで、頬がひきつっている。

「あ―‥疲れた‥」

鏡を見ながら化粧を直し、再びため息をつく。


大学時代からずっと好きだった人、清水 徹平の結婚式。

「楽しめるはずないじゃない‥」


告白さえしていない。


ただ側にいて、それが当たり前で。


いつか想いが通じる日がくるかも、なんて‥。



徹平の結婚を知ったとき、驚きすぎて涙も出なかった。