「え?航太?」

徹平の驚いた声が聞こえた。


「さっきの電話も航太くんから?」

みちるが私に携帯を返しながら訊ねる。

「‥うん、まぁ‥。」


「なんで出なかったの?かけ直したら?」

徹平の声がして、私は慌てて答える。

「せっかく久しぶりに4人でいるのに、電話するの悪いなーと思って!

大事な用事だったらまたかかってくるよ!」


「メールだけでも返してあげたら?」


みちるが心配そうに言った。


「うん‥そうする。」


返信画面を出して、ため息をつく。


素直に本当のことを言おう。


『今、うちで飲み会してるの。電話出られなくてごめんね(>_<)』


送信ボタンを押し、みんなのところへ戻った。


「航太が女の子に電話かけるとか、かなりレアなんだけど。」


徹平が意味ありげに笑う。


「えっ?
それってもしかして‥」


みちるが興味津々、という顔で身を乗り出す。


「いやいや、だから、航太くん彼女いるから。」


結局この話題になってしまい、テンションが下がった私は、
食べかけのシュークリームをまた食べはじめる。


「おいしーい!」


「彼女いるなんてきいたことないけどなぁ‥」

徹平が首をかしげる。


「まぁでも、航太くんなら彼女いて当然だよねぇ」

みちるがひとり納得している。


「なんで彼女いると思うわけ?」

今まで黙っていた琢磨が突然口を開いた。


「え?
‥電話かかってきてたから‥?」


「電話なんか誰でもかかってくるだろ。
綾は?彼氏にしかかけない?」


「それは‥」


確かに。
琢磨や徹平にかけるかも。


そういえば杉野さんとも仲良さげだったな‥。


「あーもう!
とにかく、航太くんとは何でもないの!」


クリームでべとべとになった手を洗いにキッチンへ入った。