「美味しい!」


小さく呟いて、次の一口を運んだ。


割とボリュームもあるし、ここなら食後にデザートも食べられるし。


空腹が満たされたのと、良いお店を見つけた喜びで、口元がほころぶ。


窓の外に目を向けると、おでかけの帰りだろう家族連れが見えた。


父親におんぶをせがむ男の子を微笑ましく眺めていた時。

その後ろを歩く人に見覚えがある気がして、目をとめた。


「!」


驚きのあまり、今口に運んだばかりのオムライスを、丸飲みしてしまう。


むせて苦しい喉に、慌てて水を流し込んだ。


「はぁー‥」


涙眼になりながら喉をおさえる。


「びっくりしたぁ‥」


軽くなった喉に、ため息をつくと、左から視線を感じた。


「!」


口に何も入っていなかったから、今度はむせなかった。



窓の向こうでポケットに手をつっこんだままこちらを見ているその人は、


紛れもなく、

航太くんだった。