結局、あの告白がなんなのか聞けないまま、私たちは電車に揺られている。


‥気まずい。


ちらっと隣に座る航太くんを盗み見た。

何事もなかったかのような平然とした横顔。



‥やっぱりからかわれたんだ。

なんか悔しい。

告白されて、本気でドキドキした自分が。

ちょっとかっこいいなと思ってしまった自分が。


「なんで睨んでんの?」


盗み見ていたはずが、いつの間にか睨んでいたらしい。


「え?

‥こ、航太くんはどこの駅で降りるの?」


我ながら、誤魔化すの下手すぎる‥。


「中川さんはどこで降りるの?」

「へ?」

逆に聞き返されてしまった‥。

「S駅だけど‥。」

「ふーん。」


・・・。


えっ!?会話終了なの?

私が質問したはずなんだけど‥。


なんかよくわかんない人だなぁ‥。


また横顔にもどった航太くんを見て、私も前を向いた。





『まもなくS駅に到着します。お降りのお客様は、お忘れ物のないよう‥』


「あ、じゃあ‥」


立ち上がり、コートのしわをのばす。

「今日はありがとう。」

軽く会釈をして、ドアの前まで進んだ。

開いたドアから外に出ると、一気に寒さが身を包み、私は肩をすくませた。


「さむ‥」


急ぎ足で改札を通り抜け、駅に併設されているコンビニに入る。

お酒を飲んだせいか、喉が乾いていた。

ホットココアを手に取り、レジへ向かう。

会計を済ませ、自動ドアを出た私の横に、人影が並んだ。


「送る。」


さっき電車で別れたはずの、航太くんだった。