「え‥と?」


なんだか気まずくなって、視線を足元に戻した。


「ホントに鈍いね。」

突然、至近距離から声がして、驚いて顔をあげた。


「今、口説こうとしてるんだけど。」


くどく‥。

頭の中を航太くんの言葉が駆け巡った。


ちょっと待って。


私、聞き間違えた?


「えーと‥?」


「中川さんが好きってこと。」


満面の笑みでそう言われて、私は固まった。


目元にやっぱり笑い皺。


背が高いから、普段はかっこいい系だけど、笑うとかわいい感じになるのは目元のせいか。


なぜか冷静にそんなことを考える自分がいる。


ふと、自分が航太くんをじっと見つめていたことに気付き、赤面した。


それからは顔を見れなくて、うろうろと視線をさまよわせていると、

「ふっ‥おもしれー」


ぶはっと吹き出して、口元を手でおさえる航太くん。


「ぇ‥」


声にならない声が漏れた。


「帰ろっか。」


くるりと前を向いて、歩き出す。


今の、からかわれたの!?

何!?

何だったの!?


開いた口が塞がらないまま、私は航太くんの背中を追った。