「いつもあーなの?」

前を向いたままで航太くんが尋ねてきた。

「あぁ‥うん。」

進む先に桜並木が見えて、ここもキレイだけど、うちの前の方がいいな、なんてぼんやりと考える。

「最初はどうしたらいいか困ったけど‥。」


そういえば、初めて4人で飲んだとき、二人の酔いっぷりに唖然として、私は何もできなかった。

徹平がてきぱきとタクシーの手配をして、お水を買ってきて、二人を家まで送ってくれたんだ。


徹平がいない飲み会って、初めてかも・・・。


下を向き、鞄をぎゅっと握りしめた。





「甘やかしすぎ。」

ふっと笑う気配がして顔をあげると、航太くんが振り返ってこちらを見ていた。

「中川さんらしいけど。」


「‥え‥?」


「徹平んちで飲んだ時も、中川さんがつまみ並べたり、酒片付けたりしてた。」

そんなとこ見られてたんだ。

まぁ私はその飲み会を覚えてないんだけど‥。


「俺らが部活終わって合流したら、すぐに帰っちゃったけど。」


「へ?」


「次の日朝はやいからって。

だから俺のこと覚えてなくて当然なんだよね。」


‥なんだ。


航太くんを忘れてたわけじゃなかったんだ。

人覚えないだのなんだのって‥完全にいじられ損じゃん。


「でも俺は覚えてたけど。」


そういえばそうだよね。
結婚式の時も普通に話しかけてきたし。

「なんでかわかる?」


ん?
なんでって・・・なんで?


なんか航太くん‥思ってた感じと違う。
もっと優しくて穏やかなイメージだったんだけど‥


目の前の航太くんは、いたずらを思いついたこどもみたいな眼で笑っている。