毎年4月になると、私の家で花見をするのが恒例だった。
みちると琢磨と徹平と私。
4人で飲みながら馬鹿話をして、その時だけは学生時代に戻ったようで。
そんな穏やかで心地よい関係が、いつまでも続く気がしていた。
「今年はさすがにしないよね‥」
二人きりではないとはいえ、新婚ほやほやの男が、一人暮らしの女の家に遊びに行くってどうなんだろう‥。
「いや、だめでしょ。」
一人呟いて、窓を開け、ベランダに出た。
目の前には見慣れた桜並木。
大学生くらいのカップルが手を繋ぎながら歩いているのが見えた。
なんだか無性に寂しくなり、私は部屋の中へ引き返した。
携帯を手にとり、電話をかける。
「もしもーし?」
3コールほどで、元気な声がした。
「あ、みちる?今平気?」
「うん!どしたの?」
みちるの明るい声を聞きほっとする。
「あのね、恒例のお花見なんだけど‥今年はどうする?」
「あー‥」
「やっぱり、徹平誘うのよくないかな?
奥さんに悪いよね?
新婚なんだし、いい気しないよねぇ。」
一気に続けた私に、
「えー?いいんじゃないの?」
みちるののんびりとした声が返ってきた。
「私たち4人の付き合いは、奥さんもわかってるだろうし。
ただ‥」
みちるは言いにくそうに続けた。
「‥綾の気持ちの整理がついてないなら、今回はやめた方がいいのかな、とは‥思う。」
やっぱりみちるはわかってたんだ。
私がまだ徹平を好きなこと。