「あー!結婚式に行くたびに、早く結婚したいなーって思うよね!」
式場を出てすぐ、みちるが言った。
「うーん‥そうかなぁ‥」
答えながら手袋をはめる。
三月とはいえ、ドレスにコートではまだ肌寒い。
「私は当分いいかな―‥」
確かに結婚には憧れていた。
でも、それを夢見ていた相手は、まさに今日、違う女性と結婚してしまった。
「ねぇ、二次会までどうする?どっかカフェでも入る?」
ベージュのコートの上から紫のストールを巻きながら、みちるが尋ねてきた。
「あ、ごめん。私二次会出ないから‥」
「えっ!?そうなの?」
招待状がきたときに、二次会は欠席にしておいた。
結婚式に出るだけでもつらいのに、二次会なんて行けるわけがないと思ったから。
「ちょっと用事あって・・・琢磨と一緒に行きなよ」
ちょうど通りかかった琢磨の腕を引いて、みちるの横に並ばせる。
「え?何?」
「二次会までみちると時間潰したげて。私、用事あるから、ここで帰るんだ。」
琢磨はふーんと頷き、私を見た。
「‥用事って?」
「え?」
「いや、‥別に。」
琢磨は曖昧に笑うと、行くか、とみちるに声をかけて歩き出した。
「またね!徹平によろしく!」
心配そうに振り返るみちるは、私が二次会に行かない理由をきっとわかっている。
ごめんね‥。
でもつらいの。もう見ていられないの。
我慢していた涙がこみあげるのを感じて、私はぎゅっと鞄を握りしめた。